作者:サブロー
※この記事は『あなたの子です』のネタバレを含む感想記事です。未読の方はご注意ください。
あらすじ
両親亡き後、若くして領主を務めるヴィルヘルムは、男色家であるため縁談を断り続け、暇を見ては色街で火遊びを楽しんでいた。家の断絶を覚悟していたヴィルヘルムだったが、ある日、不思議な男が屋敷を訪ねて来る。男が「あなたの子です」と告げて連れて来たのは、ヴィルヘルムと瓜二つの子どもだった。しかも男は「この子を産んだのは僕です」と言い出してーーーーー
男色家の領主×子持ち平凡。設定は西洋風なだけでゆるゆるです。気になる方はご注意を。本編全9話。エロは後日談以降で追加します。
あなたの子です より
※男性妊娠表現があります※
※他サイトにも掲載しています。
作品情報
| 種別 | 連載小説 | 状態 | 完結 |
| 文字数 | 136,104文字 | ページ数 | 40ページ |
| シリーズ | なし | 掲載先 | ムーンライトノベルズ |
| R指定 | R18 |
商業化情報
なし
おすすめ度
- キャラがたっている
- 感情描写が丁寧
- 脇役まで魅力的な群像劇
感想(ネタバレ注意)
ネタバレなし感想
男性も妊娠できる民族が存在する異世界を舞台にした話。物語は、男色家のヴィルヘルムのもとへ、突然エトナが子どもを連れて現れ、「あなたの子です」と告げるところから始まる。本編は約10話とコンパクトながら、起承転結がしっかりしており、最後まで読み応えがあった。特に印象的だったのは主人公のエトナだ。序盤のエトナはどこか飄々としていて、本心がまったく見えない。そのため、「何を考えているのだろう」と気になりながら読み進めることになった。そして終盤でエトナの真意が明かされた瞬間、それまで見えていた物語が一変する。
感情描写が丁寧で、自然と登場人物たちに感情移入できたこともあり、一気に最後まで読んでしまった。
本編だけでも十分満足できるが、その後に続く番外編も非常に良かった。本編では描かれなかった過去の出来事が補完され、「これが読みたかった」と思えるエピソードが数多く収録されている。最後まで読んでこそ完成する作品だと感じた。
ネタバレあり感想
終盤でエトナの真意と過去が明かされる内容は想像以上に心に刺さった。序盤では掴みどころのない人物に見えていたエトナだったが、過去に何があったのかを知ることで、それまでの言動が心に沁みてくる。かなり辛いものであり、読んでいて胸が苦しくなった。しかし同時に、エトナがヴィルヘルムへ強く執着していた事実も明らかになり、エトナの感情がわかったのが良かった。読み終えた頃には、エトナのことが最初よりもずっと好きになっていた。
この作品はキャラクター造形も非常に魅力的である。特にお気に入りなのはエトナの友人・テオだ。
男娼として生きてきた彼が身請けされた後を描く番外編は彼のことが良くわかる話だった。遊郭という過酷な環境の中でも強く生きる姿が描かれ、さらに好きになった。
テオはいわゆるツンデレな性格ではあるが、それ以上に情が深い人物である。そして見受けした旦那に「幸せにしてやる」という台詞が彼らしさが出ているのが良かった。
この作品は、こうしたキャラクターを象徴する言葉選びが非常に巧みである。一言で人物像が伝わる台詞が多く、それぞれのキャラクターをより魅力的に引き立てていた。
気になった点
一つだけ挙げるなら、エトナの里帰りも見てみたかった。故郷ではエトナの帰りを待っている人たちがいるように描かれていたため、その後が気になった。エトナ自身には帰郷する意思がなさそうなので、この先も帰ることはないのかもしれない。そこが切なかった。
まとめ
BLとしての恋愛だけでも十分楽しめる作品であるが本作の魅力はそれだけではなく、一つの物語として非常に完成度が高い点にある。終盤で明かされる真実、丁寧な感情描写、番外編によって広がる世界。それらが積み重なることで、本編を読み終えた後の満足感は非常に大きかった。
恋愛だけではなく、登場人物一人ひとりの人生や物語を読みたい人にもおすすめしたい作品である。